メトロの中は、近過ぎです!
「やめとけって」

「いいじゃないですか。妄想するくらい」

「まぁ。顔は良かったよな」

「私、イケメンには弱いんですよね」

むふっ、と思い出し笑いをすると、課代もニヤリと笑った。

「じゃあ、俺にも惚れた?」

「は?何言ってるんですか」

どんだけナルシストな御曹司なんだ。

まぁ確かに、課代もたまーにぞくりとする色気がある時はないとは言わないけど

「佐々木さん。今日のランチはたまたま昼時だから誘ったまでで勘違いしないでくださいね」

「するわけないじゃないですか!
私、社内恋愛はしない主義なんです」

ムキになって口走ってしまった。
課代は冗談で言ってるだけなのに、私、何を慌ててるんだろ。

「……」
「……」

しまった。空気が重たい。

「なんかあったのか?」

「いえ、別に…」

「過去に、社内で……」

「何もありません」

取り繕った感が満載なのは分かるけど……

「ふ~ん」

見られてる。課代の箸が止まっている。

「なんかあったんだ」

「昔のことは忘れました」

そう。社内恋愛だけはやるもんじゃない。

付き合っても別れても噂が広まるし、忘れたいのに顔を見なきゃいけないなんて残酷な状況になるのなら、初めから社外に探せばいい。
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