メトロの中は、近過ぎです!
お泊まりには要注意
「ここです」

重い足取りで到着してしまったマンション。

「わかった」

そう言った課代はなぜか通ってきた道を戻っていく。

「どうしたんですか?」

泊まるのやめてくれました?

「買い物。部屋どこ?」
「部屋は…601です」

やめた訳ではないんですね。

課代はこちらを振り向かずに右手だけ上げて歩いていった。

本当に泊まるんだろうか
本当に泊めていいのだろうか
上司と部下って関係で、ここまでしていいものだろうか…

確かに助けてもらった恩はある。
でも、一応一人暮らしの女の部屋、
課代は何とも思わないのだろうか?
それぐらい遊んでるってこと?
もう少し抵抗した方が良かったかもしれない。

この期に及んでもウダウダ悩みながら部屋を片付けてて、ベッドメーキングをしている時にふと気付いた。

どこに寝てもらう?

まさか私のベッドで一緒にという訳にもいかない。

慌てて押入れに入れてある圧縮した布団を引っ張り出した。
母専用のそれをベッドの横に並べてひいてみる。

いやいや、この場所はダメだ。
隣で寝るなんてありえない。

布団を畳んで、リビングに向かった。

ここもダメだ。
今からこんなとこにひいてたら誘ってるみたい。

その布団を持ってまた寝室に戻った。とりあえず畳んだままここに置いておこう。

「はぁ」

私、なにやってるんだろう…

心臓がドキドキしてる。
たぶんそれは動き回ったせい。絶対に課代を意識してそうなってるんじゃない…


それにしても遅いな…
< 54 / 309 >

この作品をシェア

pagetop