侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「ほほほ、知ってますわ。ただ貴方の恋人の名前なんて、わたくしにとっては道端の石ころほどの価値もございませんし、最後の横棒は合っていますもの大目に見て下さいませ」

エセルは余裕の笑みを浮かべながら、小憎らしくも可愛らしい口ぶりで言った。
でもほんのりと嫉妬のようなものを感じるのは、気のせいだろうか……

とその時、堂に入った艶やかな高笑い声が聞こえてきた。

おーっほっほ、おーっほっほ
母上だ……

「エセルちゃぁん、レイモンドのやり込め方にひねりが有って最高よ! ますます気に入ったわ~。それにそこのすみれの瞳の美男子君も、今度わたくしの目にゴミが入ったら、さっきのやり方で取ってね~ん。うふっ」

「さっきのやり方って何ですか!?」

「うるさいわよレイモンド! まったく貴方ときたら嘆かわしい事この上ないわね。エセルちゃん以外とキスするにしても、セッンンするにしても、いかにもさっきしましたよ、みたいなのはデリカシーに欠けるからお止めなさいね? ホ~ントそういうところ、貴方の父親そっくりでがっかりだわよ」

「なっ、母上っ……」

僕の声など全く聞こえていない素振りで、母上は剣呑にマリーを見つめ毒づいた。

「あなたもよジェニーちゃん、人様の夫に我がもの顔で口紅塗って、奥様の顔に泥を塗るのはお止めなさい。愛人なら愛人らしく弁(わきま)えて貰わないと困るわよ」
ピシャリ!

マリーの憤慨がひしひしと伝わって来るが、そんな事はどうでも良い。

「母上っ」エセルに誤解されるようなことは言わないで下さい!
と続けようとしたが、
「旦那様ーっ!!」
あああもうっ、またしても言い終わる前に、今度は慌てた様子で駆け寄って来たリードマンが派手に遮った。

「こここ、国王陛下がお運び下さいました!!」

「なにっ!」

まさかの貴賓の来訪に、僕は一瞬耳を疑った。
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