侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
ルーカス劇場は更に続きます。

「綺麗なお嬢さん、あんた令嬢にしとくのは勿体ないほど度胸が良いなぁ、柄にもなく感動したよ。……なぁ、あんたが死んだら妹さんは、自分を責めて一生苦しむ事になるんだ。妹さんの為にも胸張って生きなきゃ駄目だぞ」

ルイーズ様の瞼から、一粒の煌めきが零れ落ちました。
「ですが……」

「生き恥なんて考えは大間違いよ。なぁに、教会で花嫁に逃げられた俺だって、ちゃんと幸せに生きてるんだから大丈夫だ。エセルが相談にのるし、あんたみたいに情に厚い娘さんなら、必ず幸せになれる。神様は、ちゃーんと見てるから」

白く滑らかな頬を止めどもなく涙が伝い、ルイーズ様は銃を持つ手を下ろしました。
固唾を飲んで事の成り行きを見守っていたあちらこちらから、安堵の溜め息が漏れています。

それにしてもお父様、以前私には『この世に悪魔はいても神はいねぇ』って言ってましたよね、ほほほ。

さて、披露宴は打ち切り……なんて事にはならず、皆さま軽~い興奮状態で、パーティーは寧ろ大いに盛り上がったのです。

披露宴の最中、私は殆どの時間レイモンド様と一緒にいましたが、周りには大抵別の方もいましたし、二人っきりになるダンスの時も、個人的な話は全くしませんでした。

『どうしてあんな事を言ったのですか?』と、聞きたいような聞くのが怖いような……。
そもそもあれは現実では無かったのかも知れない、そんな気すらするのです。

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