侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「あ~らエセル様じゃありませんの、お久し振りですわねぇ」

晴れて自由の身になれたと思ったのも束の間、私は別の令嬢方に囲まれてしまいました。

「お父様と石炭掘りでもなさってるのかしら? それとも、モグラの王子様でも見つけて結婚でもしたのかしら? って、ずっと噂してましたのよ。ほほほ、そう言えば、お父様のご結婚式、大変でしたわねぇ」

伯爵令嬢のルイーズ様、二年前私と一緒に社交界デビューした方です。
取り巻きの皆さんはクスクス笑っていらっしゃいます。

三十六計逃げるに如かず!  

「ごきげんようルイーズ様、皆様、では失礼致します」

にっこりと微笑みを浮かべ、すすす……とその場を立ち去ろうとしましたが、皆さん一枚岩のように立ち塞がって、そう簡単には開放して下さらないようです。

「それにしても元炭鉱労働者(モグラ)と侯爵令嬢の結婚なんて、夢がありますわよねぇ。ま、わたくしは絶対に遠慮したいですけれど。もっとも、ミシェル様も遠慮なさったのでしたわね。ほほほほほ」

ほんとうにしつこいっ!!! 
さらりとした視線を投げ、臨戦態勢に入ります。

「そう言えばルイーズ様、先日辞書で『粘着質』と『意地悪』って調べてみましたの。そうしたら『ルイーズ』って載っていて、わたくし心の底からびっくり、数秒置いて納得でしたわ。手についた石炭の汚れは洗えば綺麗に落ちますけれど、心の汚れはなかなか落ちませんわよねぇ。特にルイーズ様くらい底意地の悪い方だと、すすぎ水はいつまでたってもヘドロのようにドロッドロでしょうね」

「何ですって!?」

わなわな震えるボス猫(ルイーズ様)を余裕の笑みで見つめながら、

「あぁら喧嘩をお売りになったのは、あなたですわよ?」

と、その時……

「やあエセル嬢、あなたに会えるなんて、こんなに嬉しい事は無い!!」

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