侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
砂・鉛味の原因であるレイモンド様とは、二週間前の舞踏会以来です。

あの夜この我が儘男、私と別行動の間に何があったかは知りませんが、すこぶる不機嫌になっていたのです。

そんな事とはつゆ知らず、庭園から邸内へ戻ってアンディーと談笑中

つかつかつかつか……
「エセル嬢、疲れたから帰る。支度し給え」

のわっ、足音も声も表情も思いっきり不機嫌! 
無駄に顔が良いから怖っ!

予定よりだいぶ早いしまだまだ話していたいけど、仕方ありません。
「あ…の、はい侯爵様。それではアンディー……いえ伯爵様、今夜はとても楽しゅうございました。ごきげんよう」

微笑みを浮かべ軽く膝を折り、頭を少し下げましたが、
「待って、セルル!」アンディーが、さっと私の腕を掴みます。

「侯爵殿、エセル嬢は私の幼馴染、偶然会えたこの機会に旧交を温めたいと思います。彼女の事は私が責任をもって送りますので御心配には及びません……。セルルもそれで良いよね?」
とキラキラスマイル。

もちろん♪ 咄嗟にコクコク

「じゃぁ決まり!」

ちょっとはしゃいだアンディーとは対照的に、レイモンド様は片眉を蛾の触角なみにぴぃんと跳ね上げられ、不快のオーラ全開です。

「勝手に話を進めないで欲しい。彼女の事はお父上よりくれぐれもと頼まれておるゆえ、あいにくそういう訳にはいかないのだよ。……さ、来たまえっ」

レイモンド様は強引に私の手をとって、つかつか歩き出しました。

「あの、侯爵様、父には私からきちんと言いますので、このままここにいたいのですが……、侯爵様には迷惑が掛からないように致しますから」

周りの方に変に思われないように小声で、でも慌てたように言いましたが、聞こえているのかいないのか取り合ってもらえません。

その後レイモンド様は、アンディーの方をちらちら振り返る私に冷たい視線を向けながら、侯爵家の車まで連れて行くと、荷物のように座席に押し込んだのでした。

ぐへっ 取り扱い注意だからー!!

おまけに車中無言て、葬式か!?
なんて心の中で突っ込みながら、気まずい雰囲気で帰宅したのです。

極力この方とはお会いしたくないと思っておりましたのに、昨日父を通してお食事のお誘いがありました。

おほほほほ、ハッキリ言って大迷惑です。

しかも、ここへ来る車中も到着してからも殆ど無言て、ホントにまったくお通夜かよーっ!!
< 20 / 153 >

この作品をシェア

pagetop