侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
「エセル、いつまでそうしているつもりだ? 出ておいで」

サファイアの瞳が、兎の穴を覗く狼のようにキラリと光ったように見えました。

「嫌です、このケダモノ! わたくしを自分の邸に連れ込んで、無理矢理体を……」

小さな叫びに金髪の狼はさぁっと顔色を変え、驚いたように声を上げます。

「な、何を言う、そんなことをするはずが無いだろう! 君がベッドの中で僕に胸をぎゅうぎゅう押し付けてしがみ付くものだから、ついつい僕もそういう気持ちになって……。それにある意味ケダモノは君の方だよ、エセル」

言葉の意味が分からず両眉を上げた私に、レイモンド様は薄笑いを浮かべながら皮肉めかして続けます。

「昨夜の君は、ライオンのようだったよ」

突然名前が出て来た猛獣に心が持って行かれ、暫し純潔喪失の件から気持ちがそれました。それにしても嫌な予感が致します。

私はもぞもぞと這い出し体にシーツを巻き付けて座り、レイモンド様の顔から若干視線を逸らし、口を開きました。

「侯爵様……、お恥ずかしい話ですが、昨夜貴賓室でお酒を嗜んでいた途中からの記憶がございませんの」

「嗜んだだって?」
楽し気に笑うレイモンド様。

「昨夜はそんな上品なものじゃ無かったよ、まさか2人でボトル8本空けるとはね」

あー、もー調子に乗ってエセルの馬鹿……

て事は、飲み過ぎからのメスライオン? 
「あの、わたくし狩りをするメスライオンのように、どなたかに飛びかかって血まみれの惨事を引き起こしてしまったのですか!?」

場外乱闘的な?

故意に私に視線を合わせて悪魔のように微笑む黒レイモンド様。

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