侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
僕は君の頭に手を添えて、食むように口付ける。
性急に合わせ目を割ろうとしたけれど、君は唇をきつく結んだまま、僕の舌を受け入れようとはしない。

僕は頭がおかしくなりそうなくらい好きなのに、君はどこまでも僕を拒むんだね、昨夜はあんなに従順だったのに。

支配欲を掻き立てられて、可愛らしい唇を軽く噛み、君が驚いている隙に舌を花びらの合わせ目に滑り込ませると、君は抵抗になんてならない力で、懸命にあらがい始めた。

無理だって未だ分からないのかい? 
仕方ないなぁ……

君を抱く手に力をこめつつ、逃げ惑う臆病な舌を追い詰め、強引に絡めとり甘く激しい舌の戯れを仕掛けると、君は徐々に抵抗するのを止め、ぎこちなくキスを返し始めた。

あぁ、エセル……

睦み合う蛇のように舌と舌を絡め合わせ、溶け合う甘美なひと時。
こんな完璧なキス、生まれて初めてだ……。

そして、くたりと力が抜けた君をベッドに押し倒す。
昨夜何があったか覚えていないのなら、今からもう一度教えてあげる……。

君の濡れた琥珀色の瞳は恐怖に揺れ、それを切ない表情で覗き込む僕の顔が映っている。

「それ以上無体な事をなさるなら、舌を噛みます」

君が悲鳴にも似た声を上げる。

僕は君に恋焦がれて気が変になりそうなのに、君は何処までも僕を拒絶するんだね。 
心臓を握り潰されるような痛みをこらえながら、君から身を離す。

「くくく、なぁんてね、いつもは強気な君が、子ネズミみたいに震えて面白くて仕方ないから、どんどんエスカレートして揶揄っただけだよ、本気にするな。メイドを呼ぶから、あとは彼女達に何なりと言いつけると良い……」

心は泣いているのに平静を装って、さも楽し気に笑い声を立てる。

そしてすぐにベッドから下りてガウンを羽織り、足早に部屋の外へ出た。
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