妄想は甘くない

「それで、茉莉さんが関根さんのリーダーってのも繋がったしね」
「そうだったんだ……」

「うん、それで土曜日……」

話に聞き入っていると、何か言い掛けて視線を外す。
照れたように口元を押さえると黙りこくってしまった。
一瞬静まった空間に、窓の外をバイクが走り去る音を微かに拾った。

「……土曜日って、土曜出勤のこと?」
「ん、この話はやっぱいいや」

瞼を伏せて背けた僅かに紅潮した顔が意外で、いじらしくて興味をそそられた。

「なに? 教えてよ~」

今は気が大きくなっているらしく、自分でも驚く程に身を乗り出して目を輝かせてしまった。

「……上目遣いは、駄目」
「え?」

軽くデコぴんで制して来たが、めげずに眉を下げたまま見つめていると、観念したのか告白してくれる。

「……また土曜日にエレベーターで会えば、何か反応あるんじゃないかって、ちょっと待ってた」

気恥ずかしそうな顔が、眉根を寄せて睨んだ。

「……」
「全力で逃げるから、何か後に引けなくなって……」

前髪を掻き上げる仕草も相まって、目に映る人は色気よりも可愛さが勝ってしまい、思わず微笑が漏れてしまう。

「……ふふふっ」
「泣いてた癖に……」

「ご、ごめんなひゃ……」

頬を摘んだ前の人も吹き出して、暫しふたりで笑いが止まらなかった。

< 131 / 134 >

この作品をシェア

pagetop