僕の肺をあげるから、君の心臓をちょうだい
「あ、覚えててくれたんだ。俺の名前」
「そりゃあ、昨日教えてもらったんだから覚えるよ。僕はそこまで薄情じゃないよ」
琢磨の言葉の真意を汲み取った咲来は、ムッと少し眉を寄せる。
琢磨は無言で微笑んだ。賢明だ。
「何読んでるの?」
琢磨は、話題を咲来の持つ本に換えてきた。
咲来の答えた本の題名は、琢磨も読んだことがあるらしい。
「それ、俺も知ってるよ。
読んだことある」
「ホントにっ!?」
なかなか本の話題で話し相手のいない咲来は、嬉しさと興奮で、さっきまで興味がなかった声は一気に高くなる。
琢磨が、しーっと人差し指を口に当てた。慌てて口を押さえる。