軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「俺が本気で惚れたから、あいつを攫った」


 レイヴンの口から放たれる真実は、べリエスの予想の範疇を超えていたのだろう。驚きに開かれた口が塞がらない様子だった。


「冷静なあなたらしくない。これは驚きました」


 いまだ放心しているべリエスに、つい苦笑がこぼれた。


(同感だ。感情的に物事を決めるのは、俺らしくない)


 それも、今回のことでカエトローグ島と戦争になる可能性もある。今は大陸の東に位置するパゼル国とのいざこざも終息していない。この状態でふたつの国と争うというのは、国家を揺るがす危機も同然だ。


「国よりも女を選んだ俺を呆れるか?」


 セレアを置いていくという考えは初めからない。彼女と出会ってから、この先も共に在る未来を絶対だと思い描いて行動していた。
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