軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「ごめんなさい、私が読めるのはこれが限界で」


 自らを嘲るような笑みを浮かべ、肩をすくめる。


 神殿は生物が普遍的に感じる欲求や欲望を不純として、禁欲が徹底されている。神官の恋愛や欲を駆り立てるような創作物の閲覧などは禁忌事項だ。


 破れば神への冒涜として弁解の余地なく、刑の中で一番恥辱を伴うとされる見せしめの絞首刑に処されてしまう。非常に重い罪なのだ。


「どういう意味だ」

「この神殿は心身が純潔である者しか立ち入れないのです。なのでそういった……その、物語とかは……」


 いわゆる、情事に関する行為が記された書物などは持ち込めない決まりになっている。そう言いたいのだが、なんせ言葉にするのが恥ずかしい。だからセレアは、濁して伝えたのだが……。


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