ハルイチと別れ、自分の部屋へ帰るとノートを取り出した。


更にポケットからボイスレコーダーを取り出し、停止ボタンを押す。



正月に貰ったお年玉の残りをはたいて、今日学校終わりにこいつを買ってきた。


再生ボタンを押すと先程までのハルイチとの会話がしっかり録音されていた。


先程の会話で俺がついた嘘をノートに書き留める。


一度嘘をついたらその通りに行動しなければいけない。




【夏目チカ】
サッカー部に入らない。
サッカーは嫌い。


【母ちゃん】
勉強をいっぱいする。
成績を良くしたい。


既に書き始めていたノートに新しく【ハルイチ】と記載する。



【ハルイチ】
病気にかかっている。





明日からもボイスレコーダーを制服に忍ばせ学校に通うつもりでいる。

無意識に誰かに嘘をつくこともあるから、抜け漏れがないようにしなければいけない。

ついた嘘によっては行動が制限されるから、毎日ノートに書き留めて、誰にどんな嘘をついたか忘れないように。



サッカー部に入らない理由だけでも、母ちゃんとハルイチに違う嘘をついたからな。


母ちゃんはなんだかんだ、俺のやりたいようにさせてくれるから、勉強という理由で十分だ。


だけどハルイチを騙すにはそれ相応の理由が必要だった。

だから春休みからつき続けていた“体調が悪い”という嘘を利用して“命に関わる病気”という壮大な嘘をついた。






「ハァ~。」

思わずため息が漏れる。

この【嘘ノート】、果たしてこの3年で何冊までいくんだろな。





とりあえず明日からは母ちゃんについた
“勉強いっぱいする”

という嘘を実行しないといけないな。




・・・・明日からじゃない。
今からだな・・・

押し入れから落書きだらけの中学校の教科書を取り出した。





第3話 完

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