「あの・・私こっち。」


松尾さんは信号を直進しようとしていた俺に対して、右を指さした。


「ああ。そうなんだ。」


「・・・・・」




・・・ん?どうしたんだ?

“ここを右”って行ったくせにその場を動こうとしない。



「信号渡って右なの?」


「ううん・・・このまま右。」


「ああっと、信号ならすぐ変わるから別に俺待たなくていいよ。」


「・・あの・・ま、また帰る時間が合ったら・・・・一緒に帰ってもいいですか?」


「なんで急に敬語?」




参ったな。

どっかの誰かと違って松尾さんはペラペラ喋るタイプじゃないから害はなさそうだけど、

それでも会話する機会は減らしたい。


だけど・・・・“嫌だ”と思ってしまった以上、嘘をつくしかない・・・




「いいよ。」

「・・・・」


「あ、おい!」


返事をした途端、松尾さんは自転車を走らせてあっという間に遠くへ行ってしまった。


なるべく普通に接したつもりだったけど、松尾さんも俺のこと変な奴だと思ったかもしれないな。


まぁ・・・しょうがないか。




信号が青になったので、交差点を渡る。




第4話 完

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