聖なる夜に来る待ち人は
「少しで良いから一緒に居て話がしたい、声が聞きたい、顔が見たい。そう思って実は今朝は待ってたんだ八雲が来るの。やっと自分の受験も終ったから。」

そう話す寺川くんはまた真剣な表情になっている。


「俺は高校に入ってからずっと八雲が好きなんだ。でも八雲は全然俺の事関心なさそうだし。図書委員の時に声掛けても事務的なことしか言ってくれないし。結構日々凹んでたんだ。受験が終ったら猛アピールするって決めてやっと、声掛けたんだよ。情けないかもしれないけどこれが事実だよ。」


確かに図書委員の貸し出し当番の時は必ず来ていた寺川くん。

もれなくうるさい女子まで連れて。
なので貸し出し作業はスピードを持ってサクッと事務的にこなしていた。


「だって図書室でうるさくする女子連れてくるんだもの。事務的にもなるわ。」


「あー、確かに煩かったわねぇ。」


はるちゃんまで援護射撃だ。


ガックリ項垂れる寺川くんは爽やかイケメンがしょんぼりになってしまった。


「それは、迷惑かけて悪かった。でも確実に会えて話せるのが図書室くらいだったから。」
しょぼくれながら話す姿にいつもと違うギャップを感じて。


なんだ、この可愛い生き物!
大きいはずの寺川くんがしょんぼり凹んで小さくなると別の生き物のように感じる!
可愛いとか、こんな大きな高校生男子に感じるなんて。
自分の感覚に戸惑っていると


「あ、ヤバイ芽衣ちゃんが絆されそう・・・」

小さく呟くはるちゃんの声に反応したのは奏くん。


「え?この情けなさで?」
結構な毒舌返しの奏くんに


「芽衣ちゃんは可愛いものに弱いのよ。趣味ぬいぐるみ集めなくらい可愛いものに目がないの。」



そこ、コソコソしてるようで聞こえてるからね!


ちょっと恥ずかしくてギーっと鋭い視線を投げると二人は首を竦めたのだった。
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