残り100日の私と大好きな君
ピッ…………ピッ…………ピッ……

随分ゆっくりな心音が聞こえる。

「咲楽ちゃん……」

ゆっくり目を開けると、いつもより随分涙まじりの奏汰くんの声。

「おはよう…、おはよう……っ!!」

奏汰くん、また泣いてる。

……いや、私が泣かせてるんだ。

「…今日は、お出かけの日だよ。海、行けるよ。……お出かけ、しよう?海、楽しみにしてたでしょ?」

その声は、震えていて、きっとダメなんだなあって察しがつく。

「…………な……………………た……く」

「ん?どうしたの?」

震えているけど、いつもの優しい声に少し安心する。

「だ…………じょ…だ……………………よ……わ……………、いけ……な…………………て…」

『大丈夫だよ、私、行けなくても』

そう言いたかったけど、全然言葉にならない。

全然、大丈夫じゃない…………

でも、奏汰くんは私の気持ちを汲み取ってくれたのか、強く手を握ってから

「いや、行こう。先生が反対しても、看護師さんが反対しても、行こう?…………だって……だって、ずっとずっと頑張って、待ちわびてたんでしょ?最後にどうしても、叶えたかったんでしょ!?……これで、行けないなんて…………ダメだよ。今までの咲楽ちゃんの頑張りが……報われない。」

あぁ、奏汰くんにはなんでもお見通し。

本当は、すっごくすっごく行きたいこと。

でも、奏汰くんに迷惑がかかるくらいなら、行かなくてもいいかなって思ったけど……

これを聞いたら、行きたくなっちゃう。

最後だもん、先生、少し見逃して。

奏汰くんは悪くないの。

私の最後のワガママ、どうか許してください。

「…………海、……行く」

「うんっ!!」
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