恋するオフィスの禁止事項 〜エピソード・ゼロ〜





商品開発部に配属されて丸4年が経とうとしていた。インテリア部門で2年間商品開発のいろはを学び、そして今の配属先である生活雑貨部門では「リフレシリーズ」を打ち立てて成功した。

たしかに商品開発は嫌いじゃない。
でもこの会社が俺をどう使う気かは分からないが、この部で実績を上げているからといってここに縛られるのでは困る。

商品開発についてはもう十分理解した。
これからはそれをどう推進していくべきかというマーケティングについての知識不足を補いたい。

俺は日々、異動願について真剣に考え始めていた。



「ああ桐谷君。おはよう」

「唐沢本部長!おはようございます」


エレベーターに乗り込むと、唐沢(からさわ)本部長にばったりと会った。

今、この本社にある推進統括本部のトップがこの人だ。
最初は業績を伸ばすための即席と思われた組織だが、今はうち部含め多くの部が傘下に入り動いて機能している。

俺が営業部だったときにこの人は営業部長だったため、大手先によく帯同してくれたことがあり、それから飲みに行く関係が続いている。


「リフレシリーズおめでとう。しかし優秀だねぇ君は」

「いえ、勉強させてもらっているおかげです」

「またそろそろ異動になるかもね」


俺より一回り以上年上の人だけれど、この人の感覚はわりと新しい。俺の考えを先回りして読まれることがある。

身なりも若々しいし、家じゃ3人姉妹の父親だとはとても思えない。


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