甘えたで、不器用でも



私の彼氏は、私を振り回すのが得意らしい。


6月、梅雨入りをした最近の天気は雨ばかり。


土砂降りの雨が窓の外で降っていて、もう今日は外には出たくないな、なんて紅茶を飲みながら思っていた矢先。テーブルの上で震えた私のスマホ。


画面を下向きにしていたので相手は分からないが、スマホの横に置いてあった小さな時計を見る。時刻は、18時過ぎ。


嫌な予感しかしないのは、私の気のせいだろうか。
恐る恐る、スマホを手にし画面を見てため息をひとつ。


嫌な予感が的中したのは、言うまでもない。


表示されているのは、彼氏の名前。内容は“土砂降りなのに傘を忘れたから、迎えに来てほしい”というもの。


スマホのロック画面に表示されたその文字の羅列を読み、LINEを開こうと試みるが、あれ。外に出ないと決めた私の心が反抗している。


ホームボタンを押すことなく、手にしたスマホを再度テーブルに戻した。


そういえば未読無視って、最近流行ってるって友達が言っていたような……。


と、訳の分からない流行りを勝手に作り、流行りに乗っかってみようと、なんとも陳腐な作戦を決行。


何事もなかったかのように口元へ紅茶の入ったマグカップを運び、それを楽しむ。私はなにも見ていない。と、まるで呪文のように唱えた。犯罪者の気持ちはこんな感じなのだろうか。


と、今度はブー、ブー、と連続して震えるスマホにLINEではなく電話のお知らせ。


きっと絶対に彼氏からだろうと思い画面を見れば、知らない番号。


いったい、誰だろう。
するりと、手にしたスマホの通話ボタンを押す。



< 46 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop