月と握手を
食器を下げに看護師の女性がやってきた。私を見るなり「今日は機嫌いいのね」と、挨拶とも皮肉とも取れる言葉をかける。どう答えるのかは、彼女の言葉を聞いた瞬間から決まっていた。
「面白いことがあったんです。ちょっとだけ」
彼女はそれ以上干渉せず「そう、良かったわね」と微笑んだ。「もしかして、慧亮くん絡みなんじゃないのー?」と言いながらにこやかに去っていく彼女に「違いますけど」と返す。お見舞いに来るようになって長いから、あいつも顔が知られてるんだろうな。
聞き慣れない名前について質問してこないハルを見ると、予想通り、雑誌に夢中だ。これからしばらくは、静かに過ごせるかもしれない。飽きて色々聞き出されないように、次に与えるものを考えておいた方が良さそう。これじゃあ、私がハルの母親みたいだ。
穏やかだった今日が終わりを告げる頃、夜空の月が、少しだけニヒルに笑っていた。
「面白いことがあったんです。ちょっとだけ」
彼女はそれ以上干渉せず「そう、良かったわね」と微笑んだ。「もしかして、慧亮くん絡みなんじゃないのー?」と言いながらにこやかに去っていく彼女に「違いますけど」と返す。お見舞いに来るようになって長いから、あいつも顔が知られてるんだろうな。
聞き慣れない名前について質問してこないハルを見ると、予想通り、雑誌に夢中だ。これからしばらくは、静かに過ごせるかもしれない。飽きて色々聞き出されないように、次に与えるものを考えておいた方が良さそう。これじゃあ、私がハルの母親みたいだ。
穏やかだった今日が終わりを告げる頃、夜空の月が、少しだけニヒルに笑っていた。