誓いのキスを何度でも
4月。

桜は満開になり、
誠太郎は新学期を迎え、2年生になる。

誠太郎は苗字が変わっても同じ小学校に通うと言ったので、誠太郎を学校に送ってから、ふたりで出勤することにした。

誠一の広い車の後部座席に乗り込み、誠太郎は自分でシートベルトを締める。
『secret monkey』の曲を流すけど、今では小さな音でかけ、3人でおしゃべりをするようになった。
時折、口ずさむと3人で声を揃えて歌ったりもするけれど…
それより3人で色々話す事が楽しいみたいだ。

誠一は川沿いの桜が満開だと言って遠回りをしてくれる。

「ねえ、サクちゃん」と誠太郎が呼ぶと

「誠太郎もサクちゃんになったね」

誠一が楽しそうに笑う。


「そうだね!えーと…じゃあ…
おとうさん、今年の運動会は来るよね」

誠太郎は照れくさそうに『おとうさん』と呼んだ。

「もちろん。果歩と一緒にみにいくよ」

「あのね、『じいじ』も見にきたいってこの間言ってたよ」

「そうか。
誠太郎、たくさん応援が来そうだな。」

「じゃあ大きなレジャーシートも用意しないと」と私が言うと、

「果歩、弁当大丈夫?」と誠一は笑った声で聞く。

「うーん。ヨウコさんにも、手伝ってもらおうかな?」

「果歩、ズルい。」と誠太郎が笑い声をたてる。

「『ばあば』の作るローストビーフも美味いよ」と誠一が笑う。

お義母さんは『ばあば』と呼ばれる事を選んだ。

「じゃあ、今度お見舞いに行った時、僕がばあばに頼んであげる。」

と誠太郎は嬉しそうに笑う。


川沿いにさしかかり、3人で桜を眺める。

「春ね」と私が言うと、

「俺たち家族もこれからスタートだ。
みんなで仲の良い家族になろう」

と誠一がミラー越しに誠太郎に話かける。

「もう、仲良しじゃん」

と誠太郎がクスクス笑う。


私は2人の笑顔を見つめて微笑み、

涙がこぼれ落ちないように

窓の外の満開の桜を見つめた。


〜〜f in〜〜

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