誓いのキスを何度でも
「んっ」と私の唇から鼻にかかった甘えた声が出る。

誠一の私が欲しいといっているような激しいくちづけ。

私の口の中を探り、絡められる舌、熱い息づかい。

吸い付くように離れない唇。

あいかわらず、キスがうまい。

膝から力が抜けそうになるけど、

目を開いたまま、頭に回された腕を退けようとしてみる。

誠一の力に敵うわけもないけど、

ささやかな抵抗…



ポンと音がしてエレベーターのドアが開いて、また閉まってまた動き出した。

降りられない。

遠慮のないくちづけが続く。

また、ポンと音がして人の気配がする。


「困りますね。マンションの風紀を乱されては。…25階でいいですか?」
と笑いを堪えた声がエレベーターの中に入ってくる。

その声は桜子先生の夫の壮一郎(そういちろう。40歳。桜子さんより2つ年下。涼しげな目元、サラリと搔き上げる髪、かなりの美形。)さんだ。
私が目の前でもがいていても、助けてくれる気配はない。
あいかわらずクール。
自分に関係ない事には興味がないのかもしれない。

私は壮一郎さんの登場に気を取られた誠一の胸をドンッと押して、離れ、息を乱して、ちっとも悪気のなさそうな瞳を睨見つけておく。

それにしても…

「壮一郎さん!女性がエレベーターで襲われてたら普通助けるでしょ?!」と怒ると、

「助けた方がよかった?」と呑気な返事。

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