同僚は副社長様


『マンション下に着いたよ。部屋、どこ?』

「403です。下まで降りようか?」

『いい、美都は部屋の中で待ってて』


端的にそう告げると、プチっと通話は途絶えた。

ああ、本当に来るんだ。

彼が訪問する実感が湧いた途端、さっきまで浮ついていた心に、不安の陰りが落ちる。

自分の中では完璧に準備したけど、古川くん気に入ってくれるかな…。

元々、私と彼は生きている世界が違う。つまり、生活水準が全然違うのだ。

この狭い部屋はペット用の部屋か?なんて、いつの日か観た恋愛ドラマに出て来る御曹司のセリフを言われてしまいそうで恐ろしい。

会いたいような、会いたくないような。

やっぱ自宅なんて招かずに、彼にお弁当を作ってあげることを提案したほうが良かったのでは、なんて思ったのもつかの間。


ピンポーンッ


家のチャイムが鳴り響き、私は弾かれたように玄関へと急いだ。


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