秋の月は日々戯れに


「だから、あなたはわたしに堂々と触ってもいいんですよ。何も、躊躇することはありません。だってあなたはわたしの、運命の人ですから」


水を入れたやかんを火にかけて、彼女が振り返る。


「……無理やりいい話で終わらせようとしてますけど、全然話に繋がりがありませんよ」


このままでは、彼女のペースに飲まれたままで終わってしまいそうだったので、それは不味いと頭の隅で警告音が鳴っていたので、彼は何とかいつもの調子で言い返す。

彼女は、ただクスッと笑って


「終わりよければ全てよし。細かいことは、気にしてはいけません」


やかんがカタカタと音を立て始めたところで、彼女はそのお湯をカップへと注いでいく。

ふわりと湯気が立ち上るカップを手に、彼女は再び振り返った。

今度は隣ではなく、テーブルを挟んだ対面に腰を下ろして、彼の前に持ってきたカップを置く。


「今度は、ちゃんと美味しく淹れましたよ」


そう言って笑った彼女は、さりげなく、エアコンの設定温度を上げた。

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