天神学園のお忍びな面々
深夜。

夕城邸は勿論、近隣の家々も寝静まっている時間。

…暗がりの中、何かが蠢いた。

門の前に立つ人影。

華奢で、柔らかな曲線を帯びたその影は、己よりも遥かに高く聳え立つその門を見上げ。

瞬間、跳んだ。

そのバネ、その跳躍力は如何なる修練を積めば身に付けられるものなのか。

一跳びに門構えの天辺に到達した影は、一旦門の上に着地する。

油断なく門の向こう側…敷地内の様子を確認。

見張りがいる様子はない。

…音に聞こえた夕城宗家の屋敷とはいえ、深夜ともなればこんなものか。

小さく鼻を鳴らした後、影は門から飛び降りた。

着地音さえ聞こえない。

着地した瞬間から、影は疾風へと変わり、敷地内を吹き抜けていた。

< 392 / 760 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop