天神学園のお忍びな面々
口を割らせるならば、幾らでも方法はある。

旧琴月流には、虜囚を吐かせる為の拷問方法が幾つも存在した。

男女問わずに。

しかし牡丹は、そのような方法をとるのは良しとしない。

時代は変わったのだ。

琴月流は不殺(ころさず)となり、夕城流も直系の長男が宗主を継ぐという形式ではなくなった。

豆柴の口を割れないのではない。

無理矢理に割るような事はしないだけだ。

「已むを得ん」

牡丹は立ち上がり、ピシャンと襖を閉じて出ていった。

「え、な…ま、待つです!尋問はもう終わりですかっ?」

「続きは明日だ。逃亡防止に後ろ手の拘束は解けんが、今夜は夕城邸で休め」

こんな緩やかで気遣いのある虜囚扱いなど前代未聞。

豆柴は呆気にとられたまま、牡丹の出ていった襖を眺めた。

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