One Night Lover
食事から帰る道の途中で華乃はバッタリ藤ヶ瀬たちと出くわした。

藤ヶ瀬は宣伝部の次長たちと一緒だった。

「池田さん、さっきはありがとう。」

さっきとは全然違う優しい上司のようなフリをして竜が声をかける。

「あ、いえ…お疲れ様です。」

困ってる華乃を見て竜は心の中でほくそ笑む。

そして隣の男に目をやった。

華乃と一緒にいた健は頭を下げ

「お疲れ様です。」

と挨拶をした。

竜は頷くと次長たちを引き連れて先に社に戻った。

「あの人が新しい宣伝部の部長?」

「あ、…うん。」

「へぇ、若いなぁ。

しかもめっちゃカッコいいよな?

てゆーか遊んでそうだよなぁ。

華乃、浮気とか絶対するなよ。」

華乃は既にもうさっき藤ヶ瀬にキスされた事を申し訳なく思った。

一方の竜はさりげなく次長たちに聞いてみる。

「池田さんと一緒にいた人は?」

「あ、彼は商品開発部のデザイナーのホープで
池田さんの婚約者です。

池田さんは彼と婚約したので3カ月前に商品開発部から異動してきたんです。」

「ウチの会社は恋愛禁止ですか?」

「まぁ、そうではありませんが…
夫婦や付き合ってる男女が同じ部署に居ると周りが色々気を遣いますし、やりにくいですからね。

大抵はどちらかが異動になるキマリです。」

竜は華乃が他の男と結婚を控えて居ると聞いて
落ち着かなくなった。

明らかに嫉妬なのだが、
竜本人は自分の気持ちにまだ気付いていなかった。



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