イケメンエリート、愛に跪く


舟はいつでもどこでも冷静で頭脳明晰な男だ。
愛を救いたいという感情面だけで、リスクを背負う事業に手を出す事は絶対にない。

確実に自分達の会社に利益になる事しかしない舟は、この事業の展開に確固たる自信を持っていた。

それでいて、愛を守る。
愛ちゃん、僕は絶対に失敗はしないんだ…



舟は日本のテレビ局と契約をするにあたり、自分が日本に滞在する間にスムーズに進めていく事を考えている。
そのためには、今日のこの月曜日にどこの会社にするか決定しなければならない。

舟はビルの谷間にのぞく雲一つない空を見ながら、ため息をついた。
すると、先ほど呼んでいたタロウが社長室に入ってきた。


「舟さん、何か用事でしょうか?」


タロウの見た目は、坊主頭で左耳にリングのピアスを二つぶら下げている。
それでいて、精悍な顔つきで、初対面の人は後ずさるほどの迫力と怖さを兼ね備えていた。


「タロウさんでも、きっとこの件は分からないよね…?」


舟は何でも解決に導いてくれるタロウに少しだけ期待を込めてこう聞いた。


「愛ちゃんが、今日の午前までに、会社に退職願いを出してるかなんだけど…
そんなのタロウさんでも調べる事はできないか…」


タロウは目をキョロキョロさせて何かを企んでいる。


「舟さん、タイムリミットは?」




< 70 / 163 >

この作品をシェア

pagetop