お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 その瞬間、驚いたように龍一郎はビクッと肩を揺らす。しかも龍一郎の耳はみるみるうちに真っ赤に染まっていた。


「龍一郎さん、照れてる……?」
「なっ……まさか」


 なぜか即答で否定されたが、その瞬間、龍一郎の頬がカーッと赤くなっていく。
 やはり照れているようだ。


(そういえば、私からキスしたのって初めてかも……)


 いつもいつも常に強引で大人の男だった龍一郎が、触れるだけの澄花のキスに照れているらしい。なんだか無性に、愛おしくなった澄花は、

「可愛いですね。ふふっ」

 目の端に残った涙を指先で拭いながら微笑んだ。

 その瞬間、龍一郎は根負けしたように、

「別に……ああっ、もうっ……!」

 とうなり声をあげると、そのまま体勢を変えて、澄花の上にのしかかる。


「夫をからかうとは、いけない妻だな……」


 そう、からかうように言う龍一郎のネイビーブルーの瞳は、濡れたように輝いていた。


「じゃあ思い知らせてください……」


(もう一人で悲しませたりなんかしない……諦めさせたりもしない……)

 澄花はそう決意し笑顔を浮かべると、龍一郎の首に腕を回し、目を閉じた。


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