ただ、そばにいたいだけ。
どうかニヤけてしまっている顔が新くんにみられませんように…。



「あ、ここでいいよ!ありがとう…」


そんなことをグルグルと考えていたらあっという間に家の近くまで来ていた。
…ここまで一緒に歩いてきたけど、新くんもこっちなのかな。


「ん、じゃあな」


ほんとうにわたしが彼の1日を使ってもいいのだろうか。
いや、これは彼氏彼女がするデートという普通の行動じゃないか。春陽。

…どうも新くんといると、常識がわからなくなってしまう。



笑わない新くん。

浮気性な新くん。

女心なんてわからない新くん。


…だけどね、これだけじゃないってこと知ってる。

いまだって知ってるんだ。

彼がわたしの歩調に合わせて歩いてくれていたこと。
そんな優しさに胸が、ぎゅっとなる。

あぁ、これが恋なんだって。
思わずにはいられなくなる。


「新くん」


「なに」


「わたし…いま幸せ」


「あ、そう」


だから、欲は言わない。







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