嫌い。だけど好き。
「えー これより、一条家 有栖川家。
婚約発表をとりおこないます」

司会者の声で始まる婚約発表。
私と・・・有栖川さんの・・・。
晃哉君だったら、どんなに幸せなんだろう?

お化粧もして、綺麗な服に身を包んでいるのに、私は とても汚い顔をしている。
泣きすぎて、メイクですら隠せないクマと腫れ上がった目。
パックをしていないガサガサな肌。

そして・・・晃哉君と離れてしまい、消えた笑顔。無表情な私が帰ってきた。


「結愛さんは・・・僕の前では笑顔で・・・
とても可愛らしい人です。この間なんて、ナイフとホークを持つ手を間違えてて・・・
少し天然な所もありますね。
結婚したら、彼女には専業主婦になってもらい、温かい家庭を作り上げたいですね」

長々と嘘らしいスピーチをする有栖川さん。

「おい・・・あれのどこが可愛らしいんだ?」
「本当だよ・・・。笑顔の欠片もないじゃないか」

小さい声だが、招待者達の声は聞こえていた。
その声にも反発する気も起きない。

私のスピーチの番。
「有栖川さんは・・・とても紳士です。
私も専業主婦になりたいです。」

何を言っていいか分からない。
言葉が浮かんでこない・・・。


私・・・晃哉君がいないと何も出来ないのね。
< 20 / 77 >

この作品をシェア

pagetop