お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~


実は、智哉の祖母に昔一度だけ会ったことがある。私の祖母と華道の展示会に言った時だ。


有名な先生らしく会場は混雑していた。


そんな中、澄んだ声で「えっちゃん」と祖母、恵津子の名前を呼んだ。


「きよちゃん」



祖母が笑顔で歩み寄って手を握り合う女性が葉山清子だった。


小柄だけれど、背筋の伸びた凛とした女性だった。


呉服屋の娘である私よりも藍色の着物を美しく着こなしていて、華道に興味がなく退屈していた私の目が一瞬で冴えたくらいだ。


柔和な笑顔からそこまで厳格な女傑のような印象は受けなかった。


あれから六年ほど経ってまさかこういう形で関わることになろうとは夢にも思わなかったけれど。



でも、智哉の賭けに乗ったなら彼の提案を一方的に跳ねのけるのも卑怯だ。



そもそも、いくら会おうと私は惚れない。





絶対、こんな唯我独尊男と合うわけがない!





という自信があったから、目くじらを立てて拒否することもないと思った。



私が自分の祖母に頼んで断ってもらう手も考えたけど、優しい祖母に仲が良い旧友と気まずい思いをさせるのも忍びない。


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