お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~


「え、先輩、結婚するんですか!?」

「しっ!声、大きい!」



月曜日。

仲の良い職場の後輩の岡野優菜に昨日のお見合いのことを話すと前に身を乗り出して問われた。


昼ご飯を食べに会社近くの定食屋に二人で出ていた。


一応周りを確認したら、とりあえず会社の人間がいなくてほっと胸をなでおろす。


私は化粧品メーカーの企画デザイン部のデザイン課に勤めている。


主に自社製品の商品のパッケージやポップなどを製作する仕事だ。


ブランドとしては百貨店などに入るものではなく、スーパーやコンビニに並ぶプチプラが自社の商品だ。


それでも、毎日忙しく業務に追われて、今はデザイナーとしてようやく一人前に仕事を任されるようになったところだ。



「しないわよ。んなもん」

「えー?どうしてですか?若い、御曹司、金持ち、しかもイケメン!人生の中ですべての運を使ったとしても出会えるかわからないのに」





確かに。



あんなに好条件のお見合いは今後ないだろう。


でも、だからって一度だけ会った人間と『すぐ結婚します!』って気になるほうがおかしい。


昔はそれが普通よ!と母は言うけれど、時代錯誤もいいところだ。



第一恋愛は当分懲り懲り。


過去の記憶を思い出すと苦くて、歯がゆい気持ちになる。


幸せだった分、どんでん返しがあった時、恋は途端にこの世で一番昏く、抹消したいものに変わるのだ。


当時の惨めな感覚をふと思い出しては胸の奥底に再び追いやる。



何度それを繰り返したら楽になれるのだろうか。







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