お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~



『いいよ。じゃあ、お前のいつも行ってる店な』



ようやく返ってきたメッセージに焦った。


単純にホテルとか名の通ったレストランに予約するつもりだったから。何せ相手は御曹司だ。


どれだけ俺様で口が悪くても、普段から格式のある店を御用達にしているはず。


私は薄給から何とか捻出する気でいたから肩透かしを食らった。


いや、私が普段行く店なんて焼き鳥屋とか居酒屋だよ?



オシャレなバーに行くことは滅多にない。


それこそ、達彦と付き合っていた時に背伸びして何度か行ったことはあるけれど、普段優菜と行くのは大衆的な飲み屋だった。


安くて味も良いのが一番いい。お洒落感は二の次だ。



そこに御曹司を連れていく。



想像でも智哉が明らかに店で浮いてしまう。




「もっとお洒落な店通っとくべきだった」

「いいじゃないですか。いつもの焼き鳥屋で。あそこおいしいし」

「オーダーメイドのスーツが焼き鳥の煤で汚れたらどうするの!?」

「そんなに煙ってなかったですけど……」





優菜が首を傾げる横でひたすらスマホで検索していく。



会社のパソコンでもインターネットに接続できるが、モニターが課長のデスクから丸見えなので休み時間とはいえ自粛している。



その中のひとつに見覚えがあって、指が止まった。




『蓮』




フレンチを和食に取り入れた創作料理の店だ。


二回ほど行ったことがある。


達彦が一度行って気に入って、二回続けて同じ店でデートしたのだ。



ここ、おいしかったな。


値段も安くはないけれど、高すぎない。


メニューの値段を見ていくと、ホテルのレストランと比べたら料理内容のわりに良心的な値段設定だった。



久しぶりにここの料理を堪能したくなって、この店に決めた。




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