お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~



「どういうこと?」

「何が?」

「見合い断るって連絡があったってばあさんが言ってた」



そう、私は智哉との見合い話を彼が出張中に断った。


それから智哉からの連絡手段は全て拒否した。


彼が日本に帰ってきた日に家に連絡があったと母から聞いて、智哉に連絡するように言われたけどそれも無視。


その日、帰宅しようとしたらマンション前に見知った車が止まっていたから、優菜に電話して無理を言って泊めてもらった。


次の日の早朝、出勤前に部屋に戻って荷物をまとめると、二日ほど会社近くのビジネスホテルに泊まった。


さすがに連泊し続けるのはお金がかかるし、もう待ち伏せはないだろうと部屋に戻ってみたら、待ち構えていたのだから智哉の執念勝ちだ。




私は未だ動揺する心を隠して、あくまで平静を装う。



「私が直接仲人の長田さんに電話したの。母を通してじゃきっとうまく伝わらないでしょ?」

「そうじゃなくて!」

「大声出さないで」



智哉の荒げた声が誰もいない夜の廊下に思いのほか響いて、私は彼を睨んだ。



智哉も我に返ったのか、少しバツが悪そうな顔をして一度口を噤む。



私はその隙に隣をすり抜けて部屋に行こうとしたけど、すぐに腕を掴まれた。



「ちゃんと話したい」


「私はな……」


「断るならちゃんと相手に失礼のないようにするのが礼儀だろ。違うか?」




正論を言われて言葉が詰まる。確かに私がしていることは失礼極まりないだろう。



正式なルートで断りを入れても、本人には一度結婚の承諾をしたのだ。



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