お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~


その時、携帯が短く鳴った。

メールの着信音だ。

開くと知らないアドレスでタイトルに『葉山智哉です』と打ち込んであった。




『先日はありがとうございました。急ですが、明日お食事でもいかがですか?ご都合悪ければおっしゃってください』




無駄のない丁寧な文章にあの意志の強い澄んだな瞳を思い出した。


それだけで少しだけすっと不快感が引いた気がした。


もちろん、気が紛れた程度だけど。



事実、私の心に深く切り込まれた傷は膿んでしまって、職場で嫌でも元カレの顔を見ては開くものだから治りが悪い。




『少し誰かを見てみるのもいいと思いますけど』




先程の優菜の言葉も脳裏に蘇った。


彼女も達彦の件を知っている。


私を心配しての言葉だということもわかっていた。


私は携帯を持つ指を自ずと動かしていた。



エレベーターが自分のフロアの階についた。



私は携帯を鞄に仕舞うと一歩籠から外に踏み出した。






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