一途な社長の溺愛シンデレラ

 たとえるならそれは、相手の幸せだけを願うような微笑みだ。

 私にはきっと、一生できない笑い方。

 感情の起伏が乏しく、自分の気持ちすら把握していない人間が、誰かを幸せにできるとは思えない。


 店を出た瞬間、吹き抜けた風に髪が舞った。

 二月の半ばを過ぎても、朝の空気はまだまだ冷たい。

 モッズコートのフードをかぶり、大通り沿いを歩きだしながら私は指先を温めるカフェカップに口をつけた。

 鼻に残る青臭いような匂いと、喉に引っかかるまったりした味わいには、まだ慣れない。

 大通りを埋め尽くす車の排気ガスから逃げるように肩を縮めながら、会社までの一本道を早足で歩いた。


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