一途な社長の溺愛シンデレラ

「前原さん、急に悪かったね」

「本当ですよ。もう新井社長ってば怒鳴りっぱなしなんですから。俺は結城のパシリじゃねえって」

 ぽかんとしているわたしをよそに、ふたりはそろって笑い出す。

「新井さんに今度お礼するって言っておいてよ」

「はい。そうだこれ、お持ちしました」

 紙袋を社長に手渡すと、彼女は私に目を移してにこりと笑った。

 年齢はおそらく私とそんなに変わらない。だけど背が高く、出るところが出て、引っ込むところは引っ込んだ魅力的なスタイルの持ち主だった。

 それこそ外国のモデルのようで、社長と並ぶととても絵になる。

 社長は満面の笑みで彼女に封筒を差し出した。

「前原さんも悪かったね、これタクシー代」

「遠慮なく頂戴いたします。それじゃあ、私はこれで」

 丁寧に頭を下げると、彼女は微笑みを残して廊下を去っていった。

 紙袋を大事そうに抱えながらドアを閉めた社長は、どことなく浮かれた顔をしている。

「……今の、何?」

 じっと見上げると、くっきり二重の目がきょとんとまばたきをした。

「今の?」

< 70 / 302 >

この作品をシェア

pagetop