今宵、エリート将校とかりそめの契りを
いったいいつ、総士がそんなことを?という疑問はのみ込んだ。
そんなことを聞かなくとも、琴の胸は喜びに震え、今感じられる総士の温もりがあれば、十分だった。


「謝らないで。総士さん、あなたでよかった……」


琴は総士の胸に頬を擦りつけながら、すぐそこに聞こえる彼の鼓動に直接響かせるように、そっと告げた。


「私も、総士さんが好きです」


それがはっきりと伝わった証のように、琴の鼓膜を震わせる総士の鼓動がトクンと音を変える。


「琴」


頭上から降ってくる彼の声が、戸惑ったようにわずかに揺れるのを、琴は首を横に振って遮った。


「私も、一生涯総士さんだけです。あなたが私に誓ってくれたように、私も誓います」


言葉を噛みしめるようにそう言って、琴はそっと顔を上げた。
途端に真っすぐ注がれる総士の優しい視線が、琴の心を、身体を射貫く。


「ああ。……琴」


総士は顔を綻ばせて大きく頷いた。


「誰にも触れさせるものか。お前は一生俺だけの妻だ」

「……あなたも、私だけの」


結婚式の誓いのようにお互いに深く熱い思いを伝え合う。
琴の目尻から美しい涙が伝うのを、総士は指先でそっと掬い取った。


そして、顔を寄せたのはどちらが先だったか――。
求め合うようにして、唇を重ねた。
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