今宵、エリート将校とかりそめの契りを
琴は自分を鼓舞するように一度大きく息を吸って、先ほどのみ込んでしまった言葉を総士に向け直した。


「あの。総士、さん、は、朝食はどこで……」


たどたどしく声を喉に引っかからせながら訊ねると、続き間に向かおうとしていた総士が、ドアノブに手をかけながら首を傾げていた。
それを見て、琴は意を決して口を開く。


「ご一緒、してはいけませんか」

「え」


琴の申し出は、そんなにも意外だったのだろうか。
総士が大きく目を丸くして、なんとも短い言葉で聞き返してきた。


「その……不躾だったなら、申し訳ありません」


琴は誤魔化すように慌てて謝罪した。


(この人から『妻』だって言われたからって、なにを真に受けて私ったら……)


図に乗ってしまった自分が恥ずかしくて、琴は総士から大きく顔を背けて隠した。
しかし。


「いや、構わない。お前がそれでよければ、着替えて食堂に行こう」


総士はそう言いながら、続き間へのドアを開けた。
自分の耳を疑って、琴は思わず勢いよく顔を上げる。
そして。


「っ……」


彼女の胸は、またしてもドキッと跳ねた。


「お前の着替えも、すぐに用意させよう。待ってろ」


琴に軽く視線を流し、微笑む総士がそこにいた。
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