きみに初恋メランコリー
また1歩、刹くんが足を踏み出した。



「……花音。あんな人、やめておけよ。俺と付き合ったら、絶対花音のこと、大事にする」

「……せつ、くん」

「なあ、花音」



ぐらぐら、ぐらぐら。

頭の中がショートして、何も考えられない。

なんだか、地面が揺れているような気さえして。



「……ッ、」



だけどわたしは、ぐっと地面を踏みしめる。

きつく両手を握ったまま、彼を見上げた。



「……ごめんね、刹くん。刹くんの気持ちには、応えられないよ」



視線の先で、刹くんが息を飲む。

構わず、続けた。



「わたしは、それでもやっぱり、奏佑先輩のことがすきだから。だから、ごめんなさい」



さっきの刹くんみたいに、わたしはぺこりと、頭を下げる。

目の前で彼が、体の両脇で固くこぶしを握りしめたのがわかった。
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