きみに初恋メランコリー
『あの人、すきな人いるんだよ。まあそれも、叶わぬ恋、ってやつみたいだけど』


『……いるよ。もーずっと、片思い』



うん、わかってるの。

でも、この想いは、止められないの。



「すきにならなくても、いいです……っそばに、いさせてください……!」



しゃくりあげながら、わたしはなんとか、言葉をしぼり出した。

目の前の先輩は、ただ無言で、そんなわたしを見つめる。



「………」



こらえきれなかった小さな涙声しかない、少しの静寂の後。

先輩のワイシャツを握るわたしの手に、そっと、大きな右手が重ねられた。

思わず、息を飲む。



「……俺は、昔からずっと、叶わない想いを持ってる。……叶わないと知ってても、それを捨てられずにいる」



涙でぐちゃぐちゃな顔に構わず、ゆっくりと、目の前の愛しい人を見上げた。

先輩は切なげに顔を歪めながら、わたしのことを見下ろしていて。



「……それでも、いいの?」



静かにまばたきした目のふちから、頬をつたってしずくが流れ落ちる。

自分の手に重ねられた彼のそれを、逆に両手で、ぎゅっと握りしめた。



「それでも、いいです……っそばに、いられるなら」



自由な彼の左手が、溢れ出るわたしの涙を拭う。

ふたりの視線が、絡み合う。

見つめる先の彼は、やはり切なげに、顔を歪めていた。



「……馬鹿だね、花音ちゃん」



今度は、先輩から手を伸ばして。

わたしたちは、2度目のキスをした。
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