きみに初恋メランコリー
「ごめんねいきなりで。何か用事とかなかった?」



その日の放課後。

待ち合わせた昇降口から一緒に歩き出しながら訊ねた俺の言葉に、左隣に並んだ花音ちゃんはこちらを見上げつつ、ふるふると首を横に振った。

そのやわらかそうな頬には、ほんのり赤みがさしている。



「いいえ、大丈夫です。だけど今まで放課後の約束をしたことがなかったので、ちょっとだけびっくりしました」

「あはは、まあねぇ。こんなときくらいしか、一緒に帰れることないだろうから」

「あ、あの、でも……うれしかった、です」



そう言って彼女は、とてもうれしそうな微笑みを見せてくれた。

その笑顔に、ぎくりと胸がざわつくのを感じながら……俺は努めて平常心で、「それならよかった」と返す。


……ここは、手をつなぐ、べきなのかな。

いやいやいや、自転車押しながらだし、それは無理あるだろ。

自転車置き場から持ち出した愛用の自転車を押していつもの通学路を歩きつつも、隣に花音ちゃんがいるというだけで、心の中は落ちつかない。

まだ明るい空を見上げながら、「そうだ、」とまた俺は話を切り出した。
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