きみに初恋メランコリー
「わたしなんかに言われても、説得力ないのは、わかってるんですけど……自分の、気持ちを……ちゃんと伝えないと、きっと後で、後悔すると思うんです。気持ちを正直に伝えることで得られるものって、きっと、あると思うんです」



視線はずっと、自分の手元のあたりに泳がせる。

顔を上げられないまま、わたしはゆっくり、だけど正直に、自分の気持ちを伝えた。


だって先輩には、いつも笑顔でいて欲しい。

大好きな人には、幸せになって欲しい。


そう、思えるのは──本当に、心から大切にしたいと思える人に、出会えたから。

あなたに出会えたからなんだよ、奏佑先輩。



「………」



わたしがしゃべり終えても何も言わない先輩に、ふと、違和感を覚える。

カタン。ピアノについた奏佑先輩の片手に、体重がかかったのとほぼ同時。

うつむいたままのわたしの視界に影が落ちてきて、不思議に思いながら、顔を上げた。
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