お見合い相手は無礼で性悪?
喧嘩と歩み寄る気持ち

約束の時間より
大幅に早く迎えに来た彼は

両親とお茶を飲みながら
私の支度が済むのを待っていてくれた

悩みに悩んで決めたのは小花柄のワンピース

淡い色のカーディガンを羽織り
手持ちタイプの籠バッグを合わせる

キラキラしたグロスに自然と口角が上がる

前髪はいつもよりふんわりとポンパドール

両サイドに垂れる巻き髪には
バラの香りのクリームを揉み込んだ

大きな鏡の前に立つと・・
いつもより笑っている私が見えた

これまでのデートが嘘に思えるほど
早く出掛けたい気持ちが脚を早める

部屋履きをパタパタと鳴らし
『お待たせしました』と扉を開いた先に


笑顔の父の隣で同じように笑う彼が見えた


『愛華。一翔君がお待ちかねだよ』


穏やかな表情の父を見るだけで彼との関係が良いことが分かった


『それでは、お預かりします』


立ち上がった彼にエスコートされ
両親に手を振った

車に乗りこむといつもの癖でシートベルトをギュッと掴む

そんな私を

『そんなに運転下手か?』


彼は嫌味ではなく、軽く笑った


『・・・そうじゃないわ』


無意識の行動から手を離すと
手持ち無沙汰にバッグの持ち手を握った

何か持っていないと落ち着かない
けれど・・・それは嫌悪感からではない


『ハハ、何緊張してんの?』


やたらと話し掛けてくれるのは以前より良いけれど
完全に私は子供扱いされているようだ


『・・・緊張なんて、し、てないわ』


否定した言葉にも詰まる失態は
益々大声で笑い飛ばされた


それでも
これまでよりも和やかな雰囲気で過ごせることが、なにより嬉しく思えた


『今日はどこへ?』


なにも聞かされていないから
答えてくれるかと期待もしたけれど


『着いてからのお楽しみ』


教えては貰えなかった


三十分足らずで着いた場所は
新しく出来たタワーホテルだった

そこからは付かず離れず
彼の背中を見ながら歩く

イベントホールに着くとそこは
現代アート展の受付だった


・・・絵を見るのが趣味?


パンフレットを受け取ると
会場内に足を進めた
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