不完全美学

心の声


凪と別れて家に帰ると、ママはまだ居なかった。

冷蔵庫を開けて、あたしは野菜やお肉を取り出す。


ママとの壁が薄くなったあの日から、あたしはたまに夕食を作るようになった。

美術室に行けなくて暇だったからっていうのもあるんだけど。

食事をしながら交わされる、ほんの少しの会話が嬉しかった。


今日のメニューはカレーライスだ。
まだ簡単な料理しか作れないんだもん。

カレーを煮込んでいる所でママが帰って来た。


「ただいま、良い匂いねぇ」

「お帰りなさい。着替えてきて良いよ」


有り触れた、平凡な親子の会話だ。
< 146 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop