END OF THE WORLD
場所は変わって王宮の中庭。
働く庭師の横でシロは必死に鍛錬をしていた。
いつの日か剣の技術は己の努力の結果だと、私の師は言った。
"過信するな、日々の鍛錬を積まぬ者に待っているのは死だけだ"と。
(おっそろしい教えですね、師匠…)
それを忠実に守って、この10年一日だって鍛錬を怠ったことはなかった。特に私は女だ、この国に男女差別はあまりないけれど、女性が非力だと見られているのは幼児でも知っている。
「…ふぅ、」
最後の一振りを払ったところで、剣を動かす腕を止めた。余りに振りすぎて手が痙攣してきている。今日のノルマも終わった、軍用の動きやすい服装とはいえ、汗が止まらない。
まだ昼だが風呂にでも入ってしまおう。
「お疲れシロちゃん!」
「ベル。ありがとう。今日もごめんなさい、仕事している横で」
「なに、庭師としては隣で剣を振るって貰ってるくらいの方が暇にならないってもんです」
何故暇にならないかは毎回よく分からないのだが、手入れ道具を片手に手を振ってきてくれる彼女は数少ない私の友人である。
友人というには年がかけ離れすぎているか、お母さん、みたいな感じだろうか。
「健気なもんですね、女子なのにその鍛錬と努力。見てて惚れ惚れしますよ。」
「あはは、植物育ててる方がよっぽど見てて惚れ惚れしますって」
「そんなことはない!これもあの苦労の絶えないアベル様の為だろう?素敵じゃないか!」
「……」
この国が平和な今、何か起きた時に平和へと誘えるように力を持っておく。
アベルのため、か。
そう、きっと私は、あの人の為に剣を振るっているのだ。
(我ながら女々しい)
「あの人の背中、結構ガラ空きですからね」
「そこを任せられてるシロちゃんかあ、私もあと二十ほど若かったらねえ」
ベルとのこんな世間話も楽しい。
この王宮は良い人ばかりで溢れている。
だからこそ考えさせられるのだ、先の戦を起こした犯人が誰なのか。
(しかもそれが、この王宮内にいるなんて)
信じ難いが、私たちは軍としてその犯人を探し出さなければならない。あの戦が終わってすぐ明らかになったこの真実にだれもが動揺したものだ、しかもこの噂がどこから出たのかも分かっていない。風の噂、なんて突き止めてしまえばそれが事実となる。
(まあ、今は焦っても仕方ないのだけれど)
相手の動きを伺うのもまた一つの戦略だ。
何も誰の動きもない今、下手に騒げば軍の信用を揺るがすことになりかねない。だからアベルは日々監視の目を凝らしている、それも皆に気づかれないように。
「シロ?」
「あ、…いえ。ちょっとシャワー浴びてきますね」
「そう?行ってらっしゃい!今大浴場が空いてるから入ってきちゃいな!」
「あはは、どうもありがとう」
まあ、深く考えすぎず、私は今の日常とアベルの身を護ろう。
踵を返してシロは浴場へと向かうのだった。