契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「…飲み会がお開きになったあと、飲み足りないからもう一軒ひとりで行こうと思って…
そしたら北川が心配してついてきてくれて…」

やましいことなんて一つもないのに、言い訳じみた答えになる。

だって、帰りたくないと思って…なんとなく悠さんと顔を合わせるのがつらいと思って、飲みなおすことにしたのは事実だ。

「飲み足りないってなんだ。
凛はお酒強いほうじゃないだろ。
最初から北川くんと2人で行くつもりだったんじゃないのか」

「違いますっ、本当に…」

ダンッと音がして、悠さんが拳で壁を叩いたのがわかった。

顔の位置が一気に近くなって、悠さんの怒りが滲む大きな瞳が私の表情を少し上目でうかがう。

「男と2人で飲みに行くのは、夫に対する裏切りだと思わないのか」

「…だからっ、偶然なんです!
北川はたまたま飲み屋街に戻っていこうとする私を見て、危ないからってついてきてくれただけで」

「偶然じゃなくて、北川くんに下心があったんじゃないのか?」

下心…?

北川は本当に心配してくれただけなのに。

入職してからずっと、一緒に助け合って支え合ってきた大事な仲間なのに。

北川のおかげで、私は気持ちが楽になって救われたのに。

いくら悠さんでも、そんな言い方は許せない。

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