契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「今日が何の日だかわかるか?」

「え?何の日って…」

首を傾げる凛。

覚えてるわけないよな。

内科医院の跡地を見ても、凜は気づかなかったから。

凛のおばあさんが亡くなったあと、こっちに来ることもなくなっていたのかもしれないから。

「5月5日…あれからちょうど20年だ」

手紙を渡したら、戸惑った様子でその文字を追い始めた凜は、突然目を見開いて大粒の涙をこぼした。

手紙に目を落としたまま、凜は口元に手をあてる。

「…謎が…全部解けました。
キヨさんの出棺の時に思い出しかけた何かも、心筋炎の時に聞こえた『頑張れ』の声を懐かしく思ったのも…
あ、あと悠さんがやたらと迷子の心配をしてたのも」

凜はクスっと笑って顔をあげ、泣きながら満面の笑みをたたえる。

「悠さんは、昔から私のヒーローだったんですね」

凛の髪をなでながら、俺まで泣きそうになる。

「俺が医者になるきっかけをくれたのは、凛だったんだよ」


< 174 / 175 >

この作品をシェア

pagetop