契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました

「お風呂沸いてます。先に入りますか？」

「ああ、ありがとう」

悠さんがお風呂に入っている間、私は夕飯を並べる準備をする。

少しして悠さんがお風呂から戻ってきた。

「そういえば、ずっと気になってたんだ」

唐突に彼が言う。

「なんですか？」

私はキッチンのカウンター越しに返事をする。　

「患者の食事は、本人の嗜好に合わなくてもマニュアル通りのものを出すのが普通だろ。
だけど君は、患者が喜んで食べられるものがないか考えて、わざわざ昼休みを潰してまで担当医に相談に来る。
どうしてそこまでするんだ？」

悠さんはそんなところを見てくれていたのか…

「父が癌で入院してた時、最後はなにも食べられない状態で、どんどんやせ細っていって亡くなったんです。
入院中って食事くらいしか楽しみがないから、食事をとれる患者さんにはなるべく喜んでもらえる食事に出してあげたいなって」

気恥ずかしくて少し俯く私に、「なるほど」と悠さんは呟いた。

「やっぱり優しいな、凛は。あとで思い切り抱きしめるからそのつもりで」

「えっ！　なんでそうなるんですか！」

「ダメか？」

眉間にしわを寄せて見つめる悠さんにぶんぶんと首を横に振ったけど、私は何も言えず真っ赤になってしまった。