契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
ようやく秋らしい空になって暑さもやわらぎ、心地よく涼しい風が吹くようになってきた。

病院からマンションまで歩いて帰るにはちょうどいい。

朝は悠さんが車に乗せてくれるけど、帰りは時間が合わない。

歩いても二十分ほどの距離だ。

最近研修会で座りっぱなしでいることが多かったため、肩も腰も痛いから、少し運動して体をほぐしたほうがいいのかもしれない。

特に腰痛に関しては深刻で、先日ネットで評判の腰痛ベルトを購入したばかりだ。

もちろん、悠さんには内緒だけど。


マンションのエントランスの前まで来て、キョロキョロと辺りを見回す女性が目に入った。

誰かと待ち合わせでもしてるのかな。

特に気に留めず中に入ろうとしたとき。

「ちょっと! あなた!」

威圧的な声で呼び止められ、驚いて振り返った。

私よりも背の低いその女性は、私を上目で睨みつけている。

三十代前半といったところだろうか。

よく見れば髪の毛はとても乱れていて、洋服も首元が広がってたるんでいる。

色落ちした緩いチェックのパンツに健康サンダル。ちょっと不審に思うような見た目だ。


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